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No.319
2013/07/30 (Tue) 08:41:10



 マッカーサー・パーク


久しぶりの一人部屋ですっかり熟睡してしまい目が覚めるともう昼前になってしまっていた。Do Not Disturbをかけておいて正解だ。
窓の外にはダウンタウンの街並みが広がり人々が行き交っている。いい天気だ。ベッドメイキングのチップを1ドル、ベッド脇のテーブルに置き、さぁ出かけよう。
ダウンタウン初日、今日は周辺の散策から始める。


宿泊しているザ・ヒストリック・メイフェア・ホテル、安くて心配だったがしっかりとした造りだ。


実はこのザ・ヒストリック・メイフェア・ホテルは殺人事件もよく起こる治安の悪いエリアと隣接していて、ちょうどこのホテルが危険な地域と安全な地域の境界線のような立ち位置になっていると言われている。そう、あのアルバラード・ストリートのあるエリアだ。
ホテルのレビューにも夜間外出は厳禁だとか、夜中に銃声が聞こえたりヘリのサーチライトが見えた、ホテルを出て左側には行ってはいけない、などの体験談が語られていた。おまけにLA在住の友人にそのことを話したところ、まだ間に合うなら場所を変えたほうが良いと言われる始末。僕も最後まで悩んでいたが明日にはレンタカーを借り、ホテルの立体駐車場から直接出入り出来ることから比較的安全だろうと結論付け宿泊した。結果この判断は間違っていなかったのだが、まぁ何か面白い体験でも出来るんじゃないかという期待も無かったわけではない。

そうは言っても日中なら大丈夫だろうとホテルを出た左側、7thストリートを西に進んでみる。生活している人々や店のほとんどがメキシコ系で、あたりからはスペイン語が聞こえてくる。激安ジーンズの店など面白そうな店舗も多くあり、意外と活気が溢れている印象だ。
夜間は非常に危険とのことだったが、アジア人が目立つからか時折視線を感じる以外は直接的な問題は起きなかった。今ではこの辺りもまだマシになってきているのかもしれない。

The Historic Mayfair Hotel
1256 West 7th Street, Los Angeles, CA 90017
http://www.mayfairla.com/


少し歩くと大きな通りに突き当たる、あのアルバラード・ストリートだ。その交差点にあるのがこちら方面へ足を運んだ目的、マッカーサー・パークだ。
ジミー・ウェッブ作詞作曲でリチャード・ハリスがしっぽりと歌い上げる同名の曲があるがまさにこの公園を歌ったものである。ドナ・サマーのカバーの方が有名だろうか。
だがそれはこの辺りが栄えていた頃の話、今ではギャングの抗争で亡くなった人達の死体が底に沈んでいるという。


マッカーサー・パーク・レイクだ。底には死体が沈んでいるらしい。
MacArthur Park
2230 W. 6th St., Los Angeles, CA 90057
http://www.laparks.org/dos/parks/facility/macarthurpk.htm

 
左:保養地だった頃のボートハウスが残っている。今も使われているのだろうか。
右:この特徴的な建物はAmerican Cement Building、外壁のデザインも奇抜だ。


各種注意書きの書かれているマッカーサー・パークの看板。意外と制限が多い。

 
左:中島には多くの水鳥が住んでいて、豪快に餌をやっている女性もいた。
右:何か教えを説いている人や寝そべっている人、散歩をしている人など様々だ。


またこのマッカーサー・パークは映画ボルケーノの舞台としても有名だ。
名前の通りロサンゼルスの街を火山と溶岩流が襲う、俺達のディザスター・ムービー決定版の一つなわけだが、この作品で最初に異変が起き、トミー・リー・ジョーンズが駆けつける公園がここマッカーサー・パークなのだ。
また地味に人種問題に切り込んだ作品でもあり灰を被って「みんなおんなじ顔だよ」というラストは素晴らしく、映画好きの間では未だに思い出したかのように使われる。
余談だが僕は中学の部活で卓球部に所属していたのだが、そこでのあだ名がボルケーノだった。別に火山のようなスマッシュを打つから、などという理由ではなく、この映画を熱心に語っていたからというそのままな命名であったわけだが。それにどちらかというと僕は卓球が好きではないし入部した理由はラクそうだったから、という実に不純なものだった。しかしながら実は本気卓球の部活で悲惨な日々が待っていたのだがそれはまた別の話。



ウエストレイク・シアターの一角。

そこからぐるりと公園を周り、池を突き抜けて通るウィルシャー・ブールヴァードに沿ってダウンタウン方面へと向かう。このあたりにマッカーサー像があると聞いていたのだがどうも見当たらなかった。
ウィルシャー・ブールヴァードとアルバラード・ストリートの交差点にあるウエストレイク・シアターの看板が見えてきた。その古ぼけた感じから恐らく今はもう使われていないと思うが、この辺りが保養地だった頃の名残のようなものを感じる。
僕はこの場所がリンダ・ロンシュタットのカルメリータで「スミス&ウェッソンを質屋に入れてアイツに会いに行かなくちゃ」と歌われているパイオニア・チキン・スタンドのあった場所だと思い込んでいたのだが、歌詞の通りそれはエコーパークの近くにあるようだ。このアルバラード・ストリートをもう少し北へ進んだ所だ。

 
左:吉野家がある、その奥には特徴的な壁画が見える。
右:いくつかの医療機関が入っているLos Angeles Medical Center。外壁が星条旗になっている。

ウエストレイク・シアターの看板の下には吉野家が出来ている。
吉野家は治安の悪い地域にあるという噂を思い出すが真相はどうなのだろうか。少なくともここでは正解な気がする。

さぁ、ダウンタウンの中心地へ向かおう。


ダウンタウン中心部へ向かう。





 旅のお供


Macarthur Park Sings the Songs of Jimmy Webb

Richard Harris

最近だとハリー・ポッターで有名な俳優リチャード・ハリスがジミー・ウェッブの曲を歌った本作。タイトルがややこしいがA Tramp ShiningとThe Yard On Foreverを一枚にまとめたお得版だ。
そしてやはり語るべくはマッカーサー・パークのオリジナルが収録されていること。この曲のカバーは多くドナ・サマー版、シナトラ版とどれも素晴らしいが、個人的にはやはりこのオリジナルに落ち着いてしまう。演奏時間や変調、アレンジなど当時は結構実験的な曲だったらしい。
ちなみにこの曲はウェッブが当時付き合っていたリンダ・ロンシュタットの従姉妹であるスーザンとの破局を歌ったものだと言われている。


Simple Dreams

リンダ・ロンシュタット

古き良き時代のロサンゼルスが全編を通して感じられる一枚。
文中取り上げたCarmelitaもまさにその時代を色濃く映し出した曲だ。この曲はウォーレン・ジヴォンのオリジナルがあるのだが、そちらでは「I pawned my Smith Corona.(タイプライター)And I went to meet my man.」となっているのがリンダだと「I pawned my Smith and Wesson(銃)」と前者でヤクの売人に会いに行く下りが後者で主人公が女性になるなど、それぞれ違った視点から歌われているのがとても面白い。
僕は今回改めて調べてこの違いを知ったのだが、こういった粋な変化が付けられているのは興味深い所だ。


Pretender

ジャクソン・ブラウン

ジミー・ウェッブ、リンダ・ロンシュタットと来て思い出すのは、同じくこの年代に西海岸を盛り上げたアーティストたち、例えばイーグルスであったり、このジャクソン・ブラウンであったりだ。
このアルバムは彼の4作目となるが本作を製作中に妻が自殺をしてしまう。そういった背景が影響してか、全体的に暗く沈んだイメージが強い作品となっている。他のアルバムでも割と内面的で深い音楽性が感じられるが、本作は特に寄り添うような悲しみとも優しさとも取れる感覚を覚える。僕も大好きなアルバム。
アメリカと言うとスプリングスティーンのような力強いアーティストを連想するが、やはり本質的に求めてしまうのはジャクソン・ブラウンのような音楽性な気がする。(もちろんボスも大好きだ。)


ボルケーノ [DVD]

ミック・ジャクソン (監督)

大体本文に書いてしまったのでもはやここで語ることも無いのだが、二年に一回くらい見返したくなる作品。ちなみに溶岩流メインでタイトルの「火山」シーンの記憶は一切無い、ので英語的に火山って訳ではないのかもしれない。
同年公開のこちらは完全火山映画ダンテズ・ピークがあるが、これはあまり見返したいという気分にはならない。いや嫌いではないしどちらかと言うと好きだが、何となく。


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プロフィール
HN:
Otsuki Naoki
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男性
職業:
コンポジター
趣味:
アクション映画とロック
自己紹介:

去年のアメリカ旅行記を更新中。ロサンゼルスからエリア51のあるネバダ州、サンフランシスコまでドライブ、からのニューヨーク。週一更新目標。

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